新建築家技術者集団

建築とまちづくり

2016年11月号(No.457)

201611

特集熊本地震/被害の実態に迫る

短期間に震度7の強震が繰り返された熊本地震では、甚大な建物被害が発生、改めて地震の恐ろしさを見せつけた。多くの家々が崩壊した原因はどこにあるのか、現地をつぶさに見つめた研究者、建築家、技術者などによる実態報告である。本当に有効な耐震方策を探るために、まずは被害を直視した。

・熊本地震の特性と建築技術者への問題提起             多賀 直恒

・熊本地震による建物被害の状況                           北原 昭男

・木造住宅の被害の実態──壊れた本当の原因は          古川 保

・熊本県宇城市小川町商店街の伝統的町家の被災状況と復興支援    磯田 節子

・マンション被災の実態 管理組合の復旧への取組について      萩原 悟

・新建会員が見た熊本地震 

   江国 智洋 鹿瀬島 隆之 古川 博 大坪 克也 渋田 あい子 矢野 安希子

 


 

■新建のひろば
・日本住宅会議──サマーセミナーの報告
・愛知支部──古民家再生「春田里の家」完成見学会の報告
・新建ちば塾「熊本地震被災地調査報告」
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2016年8月21日~9月20日)

■連載
《建築と街の環境をめぐる四方山話2》
暑熱対策・新技術─冷却ルーバー           成田 健一
《新日本再生紀行2》秋田県湯沢(下)        三浦 史郎
《Work&Work1》新(あたらし)さんの家   伴 年晶
《20世紀の建築空間遺産14》エコノミスト・ビル  小林 良雄

■2016建築とまちづくりセミナーinとやま


 主張 省エネ法改正を前に、連続断熱をアメリカに学ぶ

()大橋建築設計室/新建全国常任幹事 大橋 周二

 今年9月フィラデルフィアで開かれた第11回北米パッシブハウス会議とワシントンにあるEIMA(イーマ)=米国外断熱協会を、NPO法人日本外断熱協会の視察として訪問しました。目的は、アメリカ国内で進められている連続断熱=省エネ施策にもとづく建築物の視察と、工法についての最新情報を得るためです。
「パッシブハウス」を簡潔に表現すれば、断熱性能を向上させ、極力エネルギーを使わないで快適に暮らせるようにする建物(住宅)です。さらに、自然エネルギーを利用することで創エネ住宅にも発展します。パッシブ会議会場には、設計者が関わったパッシブハウスのパネル展示や、協賛メーカーによる断熱システムや外装材、高性能窓、換気システムなどの商品紹介がされていました。


アメリカ国内では全土の気候区分を1地域から8地域まで区分し、それぞれの気候、気象条件に適合する外壁と窓・ドアの断熱性能を明確にした施工基準が定められています。数年前より商業施設など、省エネ法にもとづき外部での断熱層を連続させる(連続断熱)義務化が始まっています。見学したパッシブハウスは、主に住宅の外壁にはツーバイ材を使用、内部の一部には集成材梁のほか、鉄骨の柱・梁材が使われています。到底日本国内の仕様規定では構造審査に適合しないバリエーション豊かな工法です。
北海道では、室内側に貼った防湿フィルムで気密を行いますが、アメリカでは外壁に防水塗材を塗布した構造用合板の使用が多く、この上にEPS断熱材+塗材仕上を施す、または専用金物を使いレンガ、タイル、ボード状の仕上となっています。
また、大規模な建築物は、鉄骨造を基本に床スラブにPC版を使用し、外壁は日本でも使われている軽量鉄骨で構成され、外側から構造用合板を貼り、外装仕上を行います。したがって、外壁の防水ラインは構造用合板表面となり、ジョイント部分をシールすることで気密は外部側から行われることになります。
パッシブハウス会議には全体会、分科会を通してアメリカ全土から300人以上の設計者・施工者の参加があったようです。各分科会では、壁体内に発生する結露対策、防湿対策、基礎、床スラブ下面からの影響を回避した断熱対策など、詳細なデータと施工技術について報告がされています。
EIMA(イーマ)の本部では、1950年代から行われている湿式工法によるシステムの変遷と現在の工法について詳しい紹介を受けました。特に断熱部位の防水対策については、参考とする部分が多くあります。
今回の視察では、F・L・ライトの名建築、ベス・ショロム・ユダヤ教会、落水荘、ヘイガン邸も見学しました。これは視察の企画団体である日本外断熱協会が三沢浩建築講演会「落水荘と、F・L・ライトの環境共生手法」を今年8月に開催したことがきっかけです。建築家F・L・ライトが実現したプレイリー建築や、落水荘をはじめ環境共生手法を実現した数々の建築紹介は、近代建築の歴史からライトを学ぶ切り口とは違って新鮮でした。
日本国内では2013年に省エネ施策についての見直しが行われ、2020年に向け、改正省エネ法にもとづく新たな届け出、審査基準が設定されます。住宅の省エネ基準に見られるような設備機器の性能を加味した改正省エネ法のあり方は、これまで進めてきた外皮の断熱性能向上を逆に低下させるのではないかという声も聞かれます。設備機器に頼るのではなく、しっかりとした断熱・気密が行われこそ、本来の省エネ住宅の基本と考えます。

 

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