新建築家技術者集団

建築とまちづくり

2016年10月号(No.456)

201610

特集:北海道/北の大地の住まい

厳しい冬の気候のもとで培われた北海道の住宅から家づくりのひとつの原点を見出す、というのが特集企画の出発だった。しかし、意外にも戦前までは一部に寒冷地対応がされたが、従来の日本の住宅とあまり違ってはいなかったという。北方の住宅の研究や開発が本格化したのは戦後である。そして、官民がタッグを組んでの取り組みは急速に進んできた。現在も進化を続ける北の大地の住まいの現状をレビューし、可能性と課題を明らかにした。

・北海道の市街地に建つ住宅の「現状」と「未来」について   石原 隆行
・北方建築総合研究所の紹介-設立の経緯と概要        立松 宏一
・北方型住宅から「きた住まいる」へ             石原 隆行
・釧路・鶴居での住まいづくり                柏木 茂
・「質」「素」に暮らす北海道の家              白田 智樹
・分譲マンションの外断熱改修について            大橋 周二
・気候風土の違う地域で暮らすということ           馬場 麻衣


 

■  新建のひろば

・住まい連他共催 住生活基本法10周年第4回講座の報告
~低所得者向けのセーフティネットを~
・熊本地震被災地視察と九州ブロック会議の報告
・東京支部 第2回防災実践報告勉強会「熊本地震報告──教訓を活かした地震対策を!」
・東京支部 『日本の木造モダニズム論─木造建築の独自性を発見─』講座の報告
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2016年7月21日~8月20日)

■  連載

《建築と街の環境をめぐる四方山話1》
まちの暑さ対策技術・最前線-まちのクールスポット         成田 健一
《創宇社建築会の時代19》建築と社会状況─1900~1931─  佐藤 美弥
《20世紀の建築空間遺産13》アムステルダムの子供の家      小林 良雄
《新日本再生紀行》秋田県湯沢(上)                三浦 史郎

■  第30回全国研究集会/分科会の内容

 


 主張 『公共施設の維持管理計画を考える』

もえぎ設計/新建全国常任幹事 久永 雅敏

豊洲新市場をめぐり、情報公開のあり方とともに公共施設のつくられ方が大問題になっていますが、ここではもう一つの公共施設問題について考えてみたいと思います。それは、既存の公共施設の維持管理計画についてです。
総務省の「公共施設等総合管理計画」策定指示(2014.4)から4年、全国の99%を超える自治体が今年度中に策定を完了する予定のようです。この計画策定指示は、国交省の「インフラ長寿化基本計画」(2013.11)が根拠になっています。さらにたどると、この長寿化計画は第2次安倍内閣の成立をうけてつくられた『日本再興戦略─Japan is Back─』(2013.6)が元になっています。それにしてもこの戦略文書の副題「Japan is Back」が恐ろしい。「戦後レジームからの脱却」がこの内閣の掛け声でしたが、臆面もなく「戦前回帰」を宣言しています。
この戦略文書は、安倍内閣による「成長戦略」を推し進めるための基本スタンスを示したものですが、その中の三つのアクションプランの一つとして「安全・便利で経済的な次世代インフラの構築」が挙げられていて、「インフラビジネス」という言葉が多用されており、公共施設の維持管理などに関する基本的な立脚点がうかがい知れます。

さて、以降は京都市の公共施設などの有効活用にかかわるここ数年の動きを具体的に見ながら、この問題を考えてみます。
京都市ではすでに、2012年に「京都市資産有効活用基本方針」をつくり、その基本的な考え方を「資産」=「経営資源」とし、資産(市民の財産)の切り売りの方向を明確に示しました。その基本方針は、
1.貸付・売却で民間を主体とする事業を含めて検討する。
2.財源確保という観点で積極的に売却する。
3.余剰スペースの積極的貸付を行う。
などとなっており、有効活用の早期推進のために資産の「商品価値」を向上させるとしています。
京都市が保有する公共建築物は、延べ面積比でみると学校と市営住宅が全体の7割近くを占めています。「資産の有効活用」をしようとすれば、当然この二つをどうするかが課題になります。
先の基本方針策定とほぼ同じ時期、都心部の学校統廃合に関わっていた「跡地活用審議会」は2011年11月に新たな「学校跡地活用の今後の進め方の方針」を策定し、学校敷地の民間への切り売りの方向を打ち出します。
さらに市営住宅に関しては、「京都市市営住宅ストック総合活用計画」(2011.2)をつくり、市営住宅の建て替えを大幅に抑制し、既存ストックの用途廃止(売却)・改善・集約などに色分けする縮小計画を策定しています。
この有効活用の流れが2014年の「京都市公共施設マネジメント基本方針」、そして先の国の指示を受けた計画「京都市公共施設マネジメント基本計画」(2015.3)につながっていきます。
基本計画導入の背景は①施設の老朽化(「老朽」という言葉は先月号の大槻さんの主張の通りだと思います)②人口構成の変化(人口減と高齢化)③財政状況の悪化です。また、計画の基本的な考え方は、
1.老朽化対策・防災機能の向上
2.官民の役割分担による効率的・効果的なマネジメント
3.保有資産・財源の有効活用で持続可能な施設マネジメント)
となっており、1以外は「選択と集中」の考え方が色濃く表れています。
老朽化、人口減、財源難などを理由に、実際は資産の効率化・有効活用という言い方で、市民の共有財産を売り渡し、政府の「成長戦略」と一体となった経済政策を推進しているように思えます。おそらくどこの自治体も計画導入の背景は一緒だろうと思いますが、だからしょうがないとはならないでしょう。問題はその原因と公共施設の役割を、住民目線でしっかりと考えたのかということです。

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