新建築家技術者集団

建築とまちづくり

2015年3月号(No.439)

2015_3

特集:空き家活用の取り組みと今後の課題

大量に抱えた空き家が社会問題になっている。空き家の発生は様々な要因が考えられるが、住宅需要に過剰な新築で応えてきたツケが大きく膨らんできたわけである。空き家(住宅ストック)の再生活用は地域環境にとっての負荷をなくすと共に、新たな空き家の発生を抑えることになる。長年、新築にまい進してきた建築界はその社会的責務として、方向性の大胆な転換に取り組むべきだといえる。

・「建築安全の枠組み」と、空き家                       増渕 昌利
・重伝建地区「富田林寺内町」とその周辺での空き家活用の取り組み
民主体のアートと工房のまちづくり                       上岡 文子
・町家の空き家解消の取り組み
奈良県の歴史的市街地における町家バンク活動を通して              藤野 正文
・泉北ほっとけないネットワーク・プロジェクトにおける戸建て空き家改修     小池 志保子
・UR高島平団地における取り組みとこれからの課題               本橋 勝
・ライプチヒにおける空き家再生                        建築とまちづくり編集部


■  新建のひろば
・第3回常任幹事会の報告
・新建東日本大震災復興支援会議関西ブロック会議
・連続講座「住まいから考えるまちづくり」
・京都支部「実践報告会」の報告
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2015年1月1日~1月31日)

■  連載
《建築保存物語23》愛知県立芸術大学-2                   兼松 紘一郎
《創宇社建築会の時代3》逓信省営繕と中間技術者たち              佐藤 美弥
《木の建築~歴史と現在16》旧日光街道の町屋再生               大沢 匠
《書棚から》『震災メメントモリ─第二の津波に抗して─』


 主張 『木造建築の新技術CLT建材の可能性』
大橋建築設計室/新建全国常任幹事 大橋 周二

昨年10月に参加した建築視察で、ウイーン市の直交集成材CLTを使った集合住宅、ショッピングセンター、市内からバスで1時間半ほどの町イップスにあるCLT製造・加工工場を視察してきました。このCLT建材は今後、大きな可能性を持った木造建築の新技術です。
ウィーン市ミュールベックの中規模集合住宅は、より環境に優しく持続可能な住宅を開発し実現させることを目的に、「ウイーン市の気候保護プログラム」コンペで採用されたもの。公営住宅の省エネルギー建築として13棟252戸が建設され、その中には主要構造部である外壁、壁、屋根にCLTを使用し、外部側にロックウール断熱材240㎜を貼った工法があり、パッシブハウスとしての性能を作り出しています。

また、ウイーン郊外の床面積70000㎡のショッピングセンター「G3ショッピングリゾート」は、柱はRC・鉄骨ですが、梁成1・5mの集成材、材長24mのCLTパネルを屋根構面に敷き込んだ混構造の建築物です。これまで木造による大規模店舗は事例がなく、建物外観は自然に調和すべく屋根面が大きくカーブし、店舗内部も余裕を持った空間が広がっていました。RC・鉄骨との併用ですが、集成材CLTを活用した事例として日本国内からも多くの見学者が訪れています。
日本国内は、農水省、国交省が連携してCLTの本格的な普及に向けたロードマップが作成され、建築基準法の整備や、各種の実験、生産体制などの検討が進められています。スギ材のCLTを使用した3階建て建築が高知県内で昨年3月に竣工しています。最新の情報では、国内大手ゼネコンがRC造建物の改修工事の際に耐震補強として7層(厚さ21㎝)のCLTパネルを採用し、工期の短縮もはかられたといわれています。
今年2月9日、札幌市内で、北海道カラマツCLTに関する勉強会が開催され、100名を超える参加者があり、その関心の高さを感じています。北海道内では、その資源が豊富なカラマツ材でのCLT活用普及をめざし、大臣認定を受けて北見市でセミナーハウスの建設が進められており、その工法や今後の普及のため公開も予定されています。
オーストリアは2005年に建築物の防耐火基準が改定され、一定の性能を有する建物の場合4階建て以上の木造建築も可能となりました。前述の集合住宅では、階段、水回りなどのコア部分をRC造とした混構造としての建築も認められています。またCLTの製造工場では、幅広い需要に応えるため、厚さ400㎜、材幅2・95m、3層から8層まで加工・製造が可能との説明を受けました。
CLT建材は、板材を直交に何層にも重ね合わせることでその強度が向上し、木造建築の新技術として期待されています。施工性の容易さ、施工期間の短縮、さらに、北海道はじめ国内の木材資源の有効活用や温暖化防止、低炭素社会への貢献という点も強調されています。
一方では、製造コスト、流通の課題、設計・施工方法の確立などの課題もあり、実用化に向けたその安全性、施工性の確保がどのようにはかられていくのか、今後の展開を注目していきたいと思います。

 

先頭へ戻る