新建築家技術者集団

建築とまちづくり

2015年2月号(No.438)

 2015_2

特集:デザインを学び直す ─ 新建・東京デザイン塾

デザインとは何か──建築家技術者にとって本源的なこの問いに、改めて正面から取り組んだのが新建・東京デザイン塾。「デザインは趣味趣向ではなく、普遍的な技術として学び伝え得る」という理念をもとに、2011年から3年間で52回の講座が継続された。本特集では、参加者の聴講ノートを整理して掲載した。熱く豊かな講座を全国の会員・読者と共有したい。

・東京デザイン塾の概要とその意義   山本 厚生
・カリキュラム
・空間のデザイン
・点・線・面
・プロポーション(比率)
・シンメトリー・アシンメトリー(対称・非対称)
・自然から学ぶ
・ひと裁ち折り
・素材とデザイン
・木のデザイン
・鉄のデザイン
・コンクリートのデザイン
・土のデザイン
・自然素材のデザイン
・デザイン序章 丸谷 博男


■  新建のひろば
・復興支援会議第二回東北ブロック会議
・「加藤謙次さんを偲ぶ会」
・民家見学と三沢浩先生のミニ講座
・第10回東京地方自治研究集会参加
・学習会「建築運動と平和問題〜建築運動の歴史に学ぶ」
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2014年12月1日~12月31日)

■  連載
《建築保存物語22》愛知県立芸術大学-1                     兼松 紘一郎
《創宇社建築会の時代2》工手学校に学び建築家へ                  佐藤 美弥
《設計者からみた子どもたちの豊かな空間づくり15》どこで靴をはきまえますか?   富永 斉美
《木の建築~歴史と現在15》岡田信一郎自邸                    大沢 匠


 主張 『人々の生業と生活要求に根ざすこと──阪神・淡路大震災から20年』
川本建築設計事務所/新建全国事務局長 川本 雅樹

2015年1月17日は阪神・淡路大地震の発生から、ちょうど20年にあたります。あらためて、この大震災で犠牲になられた方々に心からの哀悼の意を表するとともに、ねばり強くがんばってこられた被災者と被災者支援を続けてこられたみなさまに、心からの敬意を表します。「創造的復興」がもたらした災害

いまでは神戸や西宮などの街はきれいに整備され、震災はもう過去のものとの印象を受けます。開発を優先した政策「創造的復興」によって、各地で都市再開発事業や区画整理事業が行われ、高層・超高層の復興住宅が建設され、神戸空港やポートアイランドの先端医療センター病院なども造られました。
一方で、当時の村山富市首相の国会答弁にもあった「生活再建は『自己責任』」ということで、被災者支援は1世帯40万円の義援金の配当以外は何らの個人補償もなく放置されたのです。これによって、被災者のなかに自殺や孤独死、自己破産、廃業、二重ローンなどの塗炭の苦しみが増大しました。
このような現実と苦しみは「復興のプロセスのなかで、不十分であったり、誤っていたりすることによって生じる災害」であり、「復興災害」そのものと言えます。復興災害は医療や生業、住宅など多岐にわたりますが、ここでは、建築・まちづくりに関係のあるいくつかについて見てみます。

借上公営住宅の追い出し問題

借上公営住宅として、民間住宅やUR住宅が借り上げられましたが、兵庫県や神戸市は20年の契約期間が終わるという理由で、退居を迫っている問題があります。

被災者などの運動に押されて兵庫県は期限完了時に80歳以上(神戸市は85歳以上)で、要介護度3以上か、重度障害者のいずれかがいる世帯で「判定委員会」が認めれば継続居住が可能になりました。引き続く運動の高まりで、兵庫県や神戸市はさらに一定の要件緩和方針を出していますが、公営住宅の趣旨からいっても希望者全員に対応すべきで、20年経過したからといって退去を迫ることは、高齢被災者の健康と安心を脅かす冷たい施策と言わざるを得ません。

「災害孤独死」をどう考えるか

阪神・淡路大震災では、応急仮設住宅の解消までの5年間に233人、復興公営住宅入居開始からの14年間で824人、合計1057人の孤独死が確認されています。田中正人氏(㈱都市調査計画事務所代表)の報告によると、その特徴の一つは、仮設住宅での孤独死は経年とともに徐々に減少するが、入居者数あたりの発生率は上昇しており、仮設住宅団地に取り残された人々に特化していること。二つは、復興住宅での孤独死の発見は、仮設住宅と比べて長い時間を要している。理由は復興住宅が被災地から遠く離れた郊外に建設されたり、入居した大規模な高層住宅は従前の居住状況と異なるために、上手く近隣関係を形成できなかったこと。田中氏の報告では『亡くなった人は、失業・無就業や未婚、アルコール依存といった孤立のリスクを抱えた50代以下の若年層が中心を占める』とあり、被災地の孤独死の特異性が現れています。
当時、建築技術者が被災者の幸せを願って取り組んだ仮設住宅や復興住宅が、結果として多くの自殺者や孤独死を生んだことをどう考えればいいのか。被災者との対話・交流・共同による、広い意味でのすまいづくり・環境づくり・社会づくりの必要性が提起されていると受け止めるべきなのでしょう。

阪神・淡路大震災復興から学ぶこと

災害列島日本では阪神・淡路大震災後も、新潟県中越地震(2004年10月)、能登半島地震(2007年3月)、新潟県中越沖地震(2007年7月)、東日本大震災(2011年3月)、台風12号による紀伊半島豪雨災害(2011年9月)、広島土砂災害(2014年8月)が発生しています。私たちが阪神・淡路大震災から学ぶことは、人々の生業と生活要求に根ざした立場に徹して柔軟に仕事を進めること、近隣の人々や自治会などに協力して地域のまちづくりに積極的に専門性を生かして関わっていくことではないでしょうか。
地域の人々は建築・まちづくりの専門家をきっと頼りにしていると思います。

 

 

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