新建築家技術者集団

建築とまちづくり

2014年11月号(No.435)

建まち11月

特集:駅─人やまちをつなぐ地域拠点

東京や大阪など大都市では、駅舎や周辺の大規模再開発が「活況」を呈し、エキナカと呼ばれる構内商業施設は各地で拡大している。国鉄民営化後、主要な公共交通である鉄道のあり方も様変わりしてきた。しかし、駅が人とまちをつなぐ重要な拠点であることに変わりはなく、人々の暮らしに根付いた駅を目指す取り組みも行われている。駅と人・まちの関わりをいくつかの事例から考える。

・駅が持つコミュニティ空間としての新たな存在意義
都市の象徴である海外の駅と比較して                圡谷 敏治
・無人駅を中心にまちづくり・人づくり
山形鉄道フラワー長井線「羽前成田駅前おらだの会」を訪ねて     高田 桂子
・協働の力で駅前広場づくり 姫路の実践とこれからの課題      米谷 啓和
・うめきたに森と原っぱの聖地(丘)を――梅田貨物ヤード跡地利用   吉田 薫
・駅から始まる計画住宅地・三題 田園調布/常盤台/八千代台    浅井 義泰+小林 良雄+鎌田 一夫


■  新建のひろば
・第2回デザイン・ミーティング
・第29回大会期第3回全国幹事会
・新建学校2014「A・レーモンドをめぐる世界の巨匠たち」
・第12回地方自治研究全国集会in滋賀
・「住宅研究・交流集会──いま、公共住宅、民間住宅の現場で何が」
・「福島の原発災害─事故から3年半、福島はいま─」
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2014年9月1日~9月30日)

■  連載
《建築保存物語19》東京駅(1914年東京都)               兼松 紘一郎
《設計者からみた子どもたちの豊かな空間づくり13》保育園の園庭が持つ役割  川本 真澄
《木の建築~歴史と現在12》吉田五十八の粋                 大沢 匠
《書棚から》『近居 少子高齢社会の住まい・地域開発にどう活かすか』


 主張 『高齢者の住まいを考える-スマートウェルネス住宅・シティ批判-』
もえぎ設計・新建全国常任幹事 久永 雅敏

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の仕事にかかわっていて、設計チームの討論で「地域・集まって住む・一人ひとりが主体者・自然・なじみ」などをキーワードに設計を進めています。設計の過程で高齢者の住宅に関する資料を調べていて、大変気になることが進行していることを知りました。「スマートウェルネス住宅・シティ」という政策です。今年の総務省の発表で高齢者人口がついに25%をこえました。また、『高齢者白書・H25年版』によると「世界のどの国も経験したことのない高齢社会を迎えて」おり、65歳以上の独居高齢者が増え続け、高齢者のいる世帯が41・6%に達していると報告されています。体が弱くなっても自宅で過ごしたいと思っている人が7割近くおられますが、居住環境はそうもいきません。高齢者の事故の8割近くが住宅の中で起きており、生活上の不便として買い物・通院・交通機関が上位を占めています。振り込め詐欺の被害者の8割が60歳以上、虐待を受けている高齢者のうち約7割が要介護認定者という報告や、日常会話・近所づきあいが少なくなり「孤立死」を身近な問題と考える単身高齢者が4割をこえるという驚くべき調査結果も報告されています。これが高齢者のおかれた現状です。
今年度の国交省の住宅局関連予算に「スマートウェルネス住宅等推進事業」という項目が新たに登場しました。昨年までのサ高住を中心にした「高齢者居住安定化推進事業」が衣替えしたものです。このほど「国土形成計画」にもとづく基本計画『国土のグランドデザイン2050』が国交省から発表され、ここにも国土づくりの基本戦略に「スマートウェルネス住宅・シティ」が位置付けられています。横文字の多いのがこれらの報告書の特徴です。余談ですが、中身のなさをごまかすために使っているのではないかなどと勘ぐってしまいます。
さて、「スマートウェルネス住宅・シティ」の概念とはおおよそ次の3点ということです。①「既存の高齢者対応の概念をこえ、省エネ、バリアフリー、生活拠点集約、安全で安心、健康(ウェルネス)に暮らせる住宅・まちづくりを実現。その際、ICTを活用(スマート)」そして「サ高住の整備とあわせ、高齢者等が保有する住宅・宅地資産を活用・資金化」する。②「公有財産・公有地を活用したPPP(民営化等)によるリーディングプロジェクトの実施」や「高齢者向け住宅等の資金調達拡大のため、リート(不動産投資信託)の活用に向けて環境整備」を行う。③「BRT(バス高速輸送システム)等新しい交通システムの導入」など。
なんのことはない、新しい装いを施した高齢者向け住宅と高齢者が所有する不動産や公有地の市場化という、新自由主義むき出しの政策としか思えません。先ほど紹介した高齢者のおかれた現状を読み込んでいない、あまりにもお粗末な構想と言わざるをえません。
ましてこの構想が厚労省の「地域包括支援システム」との連携を視野に入れているとすると、なおさら問題です。「地域」と「暮らしを支えるマンパワー」というまちづくりの重要な視点がまったく欠如しています。
高齢者の住まいを考えるときケアの在り方を無視するわけにはいきません。『建まち』425号で「地域で支える高齢者の住まい」が特集されました。その中で、松岡洋子氏によってエイジング・イン・プレイス(地域居住)という考え方が紹介され、地域・居住・ケアの関係がデンマークの事例をもとに整理されていて大変参考になります。
現実に根差し、一つひとつの課題をていねいに拾い上げながら計画や設計の仕事を積み重ねていかなければ、知らない間にとんでもないものをつくってしまいかねない動きがあるのだということを、肝に銘じなければと思います。

 

 

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