新建築家技術者集団

建築とまちづくり

2001年6月号(No.288)

■特集■サステイナブルランドスケープ

 地形、気候、生態系などの自然環境(土地性)を基盤とするランドスケープは、同時に居住や生産など人間の営為による自然の変造や人工物が付加されたものでもある。とりわけ後者は時代とともに変化し蓄積されるので、ランドスケープは土地性プラスそこに加えられる人間の営みや人工物、自然自身による転位変遷の総和と言うことができるだろう。伝統的に言われてきた作意の下の「造園」だとかその現代なスタイルとしての「景観創造」、あるいは制御手法としての「緑地工学」などという解釈に納まりきるものではない。
近代以前においては、現代の生産技術の登場以前という制約があり、また共同体も人びとへの求心力を保ち得ていたことで、ランドスケープは個々の土地から乖離することなく、共同体を構成する人々に共有の風景心象たりえた。しかし近代以降、生産技術(とそれを操作する資本)は地域的な共同体ひいては国家さえ飛び越えて発展し、時代を支えた近代主義とその造形は高次に抽象的で幾何学的な形態を追求することになる。個々人の生活が多様化し共通の経験が減少してきたこの時点において、人工物ばかりが顕在化して土地性は後景に追いやられ、ランドスケープは人々が自然に共有する風景と言えるものではなくなってしまった。
しかしながら、それでもランドスケープは土地性から脱却することなどはできない。例えば窓の上に庇ののる建物(陽射し)や商店街に架かるアーケード(降雨)、河川沿いの堤防(氾濫)や坂の途中から現れる地下鉄(地形)など、まったく人工的かに見える日常の空間風景も土地性と無縁でいるわけではないし、それらは生活時間の経過とともになじんだものになっていく。
一見混沌とした現代ランドスケープの中に潜む基盤としての土地性を発見し、人間の営為、人々の生活とともにあり続けるサステイナブルな可能性を見いだしたい。
(特集担当編集委員 鎌田一夫・林工)

ダイバアシティ・ランドスケープ
――生物としての人間と自然のための環境計画

進士五十八
地域に根ざすランドスケープの展望
――地形に宿る日本の記録を見直そう
浅井 義泰
住宅開発に見る生活空間としてのランドスケープ 松岡 宏吉
市民参加でつくる地域景観 関谷 真一
湖における環境復元、水辺の風景の再構 中村 圭吾
■連載
《忙中閑》 政治の混乱と地域 丸谷 博男
《建築運動史27》 19年ぶりの全国組織 新建築家技術者集団の結成 本多 昭一
《大学研究室・教育現場レポート》 火災と消防防火研究のナショナルセンター(消防研究所) 関沢  愛
《主張》 「木と森林の再生」建築とまちづくりセミナー21in妙高の成功を! 大橋 周二
《世界の集合住宅見聞録15(最終回)》 ルオホラハティ 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き15(最終回)》 清雅堂のなまこ壁 木下 龍郎
《ワーク&ワーク新建56》 みつばち保育園新築工事 杉谷久美子
《面白かった本・気になる本》
バリアフリーデザイン研究会編『バリアフリーが街を変える――市民がつくる快適まちづくり』(学芸出版社)
藤森照信『建築探偵、本を伐る』(晶文社)
《ひろば》 震災研究センターシンポの鳥取県知事講演で大きな感銘/千葉支部の近況/2001年度新建神奈川支部総会報告/(仮称)「欠陥住宅関東ネット」設立へ向けて

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